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留学ドキュメンタリー

留学ドキュメンタリー 第45話 =残りの半年に向けて中間研修=

2017年1月31日、大阪ベイエリアに位置する舞洲。「心連心・中国高校生長期招へい事業」第11期生たちが全国から集まった。第11期生31人の留学期間は、2016年9月から2017年7月まで。折り返し地点となるこの時期、半年間を振り返る「中間研修」を毎年行っている。日本留学の目的を再確認するとともに互いの経験を共有し、残りの半年をより充実させるために目標設定を行うためだ。

部活動で心身を鍛錬



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デッサンが得意な鄭桐さんは部活も美術部に入部した。

  研修は5日間。2日目は、「私の半年間」の発表から始まった。

  トップバッターは、清風南海高等学校(大阪府高石市)に通う寇主銘君。毎朝の朝礼では般若心経を読誦すること、仁徳天皇陵近くにホームステイしていることなどを伝えた。部活動はバスケットボール部に所属する。「先輩後輩の上下関係もあるし、練習も大変。そこまで大変なこととは思っていなかった。先輩たちの言っていた“しんどいけど楽しい”という言葉の意味がだんだん分かってきました」と話した。

  発表の持ち時間は1人4分。部活動や学校行事、暮らしている街などの写真を映し出しながら、どんな半年間を過ごして来たのかを報告していく。とりわけ部活動は、生徒たちの最大関心事の一つ。中国では勉強漬けだっただけに、来日前から期待に胸を膨らませてきたことがスピーチからも伝わってくる。

  バスケ部は心連心の生徒たちの間でも例年、入部する生徒が多い部活動だ。寇君以外にも、陳溢陽君(和歌山県立那賀高等学校)や張義澤君(東京学芸大学附属国際中等教育学校)が部員になった。

日本でしか経験できないことを


  バスケ部と並んで人気なのが武道系だ。「日本でしか経験ができないから」と挑戦する人も少なくない。活水高等学校(長崎市)の褚睿雯さんは弓道部に入った。
   「今は矢を射ることができるようになった」と、褚さんは胸を張る。部内で「中国語を教えて」と言われミニレッスンもしている。先輩たちは中国語で自己紹介できるまでになったそうだ。
   そのほか、鹿児島育英館高等学校に通う梁愷東君は剣道部、福岡西陵高等学校の韓星さんは柔道部だ。運動部に入った生徒たちは練習の厳しさに驚きや戸惑いを感じながらも、心身の鍛錬になっていることを実感しているようだ。

  文化系では茶道部の人気が高い。長崎県立壱岐高等学校の何祥龍君は「正座にも慣れた」と話し、とわの森三愛高等学校(北海道江別市)の劉鈺辰さんは「茶道部と家庭部に入りました。どちらも美味しいものを作ったり、食べる部活です」と言い、同期生たちの笑いを誘った。周躍さん(鹿児島県立武岡台高等学校)と郭倩鈺さん(長野西高等学校)も茶道部だ。

学校行事を通して友達づくり



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「大きい声であいさつすると良い」と6班の例を発表する曹源君。
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失敗したこととして「方言が分からなくて、会話についていけなかった」と2班の発表をする劉伊さん。
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「弁当を食べる時に話題が見つからない」と1班の失敗例を発表する趙祖巍君。


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班での話し合いが、新たな発見や共感、課題の解決につながっていく。
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つきあい方の失敗例として「何も話さない」「遠慮しすぎる」と劉禎君(5班)
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つきあい方の成功例を男女別で説明する李笑寒さん(5班)。

  学校行事を通して、同級生たちと打ち解けていく様子も伝えられた。

  「体育祭では負けてしまったけれど、友だちがいっぱいできた」のは、静岡学園高等学校の鄭桐さん。何祥龍君は百人一首大会にクラスメートとチームを組んで参加した。「僕も4枚の札を取りました。すごいでしょ、拍手〜(笑)」と言って、皆から大きな拍手を受けた。

  ホストファミリーについて伝える生徒も多かったが、なかでも印象に残ったのが楊正琨さん(京都府立鳥羽高等学校)と郭倩鈺さん。楊さんは「お母さんが作ってくれたお弁当にはパンダのおにぎりが入っていて、スペシャル弁当だった」と紹介し、郭さんは仲の良い五人兄弟に囲まれた賑やかな生活を送っていることを伝えた。

お国自慢



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「私の半年間」では、ご当地言葉や名物についても各自、発表した。

  生徒たちの留学先は全国に散らばる。ご当地言葉や名産品・グルメを誇らしげに伝える姿はさながら観光大使のようだ。

  「大阪はたこ焼き、お好み焼きと思うかもしれませんが、串カツもあります。串カツ屋さんの多い新世界というところには、ビリケンさんという像がありますが、足の裏をこすると願いが叶うと言われています」と伝えたのは、大阪府立夕陽丘高等学校の万美池さん。韓星さんも博多ラーメンについて詳しく紹介した。

  「“しばれる”は冷え込む、“しゃっこい”は冷たい、“めんこい”はかわいいの意味です」と北海道江別市の立命館慶祥中学・高等学校に通う李澤宇君が言えば、次に登壇した沖縄県立向陽高等学校の謝雨欣さんは「今、沖縄は20度です。“さ”は、めっちゃ使います」。周躍さんは「鹿児島弁は難しいですよ」と言いながら、「“びんた(=顔)”という言葉の意味は分かりますか」とクイズ形式で紹介した。

  彼らが習得しているのは方言だけではなさそうだ。


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「“フロリダ”って知っていますか?」
若者言葉について伝える張義澤君

  張義澤さんは「“フロリダ”って知っていますか? Lineでの会話から離脱する時の言葉で、“風呂に入るから”から来ています。使ってみて下さい」と若者言葉を紹介し、褚睿雯さんは「神ってる」「ゲロフレンド」「卍(まんじ)」など女子高生の間で流行っているJK用語を伝えた。また、「学校に男の子がいないので、男の子の言葉を使ったりするのが女子高の特徴です」と言ったのは、光ヶ丘女子高等学校(愛知県岡崎市)の郭曼玉さん。日本人の同級生たちと付き合うなかで、教科書では学ばなかった“生きた日本語”や“変化する日本語”を体感しているようだ。

来日して発見したこと



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「お年寄りがボランティアをやっている」と、
生活者として「発見」したことを発表する劉冠龍君。

  半年ぶりに会う同期生の頑張りが刺激になり、「自分もまた頑張っていこう」と思えた時間だったのではないだろうか。「私の半年間」の発表が終わると、6つの班に分かれてのグループワークへ。事前に書き込んできた「来日して発見したこと」シートを持ち寄り、話し合い、班としての発表内容を決めていく。

  シートを見せてもらうと、縦軸を「ポジティブ」「ネガティブ」、横軸を「やっぱり」「びっくり」とし、4つのブロックに分けられていた。さらに、それを「来日して1週間以内で分かったこと(観光客としての視点)」と「3ヶ月以上住んで分かったこと(生活者としての視点)」に分け、自分の一押しの「発見」を話し合いながら発表内容を決めていく。


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「発見」したことが出揃った。ポジティブ、ネガティブに映った発見はほぼ同じ数。

  生徒たちは何を「発見」したのか。
  まず、観光客の視点の「発見」から。「ポジティブ」に見ていたのは、「電車が時間通りに来る」「部活に入ることは大事なこと」「いろいろなサービスがあり、思いやりがある」「体育の授業内容は種類が多く、いろいろな体験ができる」など。「ネガティブ」に映ったのは、「体操服の着替えを教室でする」「物価が高い」「職員室に入る時の挨拶の仕方が厳しく、面倒くさい」「寒い冬でも短いスカートを履いている」など。

  生活者の視点での「発見」で「ポジティブ」にとらえていたのは「救急車を見たら他の車が止まるのを見て、感動した」「お年寄りがボランティア活動をしていて、普通にそういう人が多い」「報・連・相をすると、スムーズに進む」「(日本人は)いろいろと手伝ってくれる」など。「ネガティブ」に感じていたのは「外食時はワリカン」「学校で女子と男子の交流が少ない」「『はい』は肯定の意味ではなく、曖昧にしたい時にも使う」「日本人は曖昧すぎる」「日本人は自分の意見をあまり言わない」「部活は毎日長時間で厳しい」などが挙げられた。

  発表が終わると、日中交流センターの担当者は「学校生活のことが多く、『ポジティブ』と『ネガティブ』の数はほぼ同じくらいですね。文化には、水面より上にある『目に見える文化』と水面下の『目には見えない文化』があります。みんなには、『目に見えない文化』に注目してほしいと思います」と締めくくり、午前中のワークが終わった。

成功体験を共有



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班で話し合い、分析したことを書き込んでいく

  午後は、中国と日本の高校生活の比較をした後、日本の高校生との付き合い方について考えた。日本人高校生と仲良くなるためにどんな方法でアプローチしたか。自分が実際にやってみて成功したアイデアや失敗例を共有した。

   成功した例は「中国の文化に興味を持っている人に話しかけた」「大きい声で挨拶する」のほか、「SNOW(写真加工アプリ)を使った自撮り写真を送り合う」「Lineをやる」などSNSを活用するアイデアが紹介された。失敗例は、「とりあえず笑うようにしていたら、笑い過ぎた」「答えにくい質問をして気まずくなった」など。また、名前を覚えられず間違えて言ってしまったことがあったが、「あだ名を覚えるようにした」ことで解決したと話す班もあった。


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「家庭科では調理実習もある」と、授業内容の比較について発表をする張霆宇君
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「(中国の学校と違って)PPTをあまり使わない」と報告する趙津さん。
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張雨瀟さんは、「担任の先生は冗談を言うこともあり、友達同士のような感じがする」と伝えた。
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「部活では監督やマネージャーもいる」と伝える孫瑞雪さん

  2日目最後のカリキュラム「陶芸体験」では、職人さんから手ほどきを受けながら、各自がそれぞれ思い思いに陶芸作品を制作した。翌3日目は残り15名の学生による「私の半年間」の発表に加え、「日本人の曖昧さ」についての分析・発表などを行った。研修ではさらに、着物の着付け体験、古都・京都の観光などを通して日本文化に触れる時間も用意されている。

  研修の合間に生徒たちの声を拾った。

  「部活はバスケかバレー部に入るんだろうなと自分では思っていましたが、結局入部したのは吹奏楽部です。ギターは得意でしたが、エレキギターは初めて。入部して一週間後に定期演奏会があって大変でしたが、頑張ることができました」と話すのは、明桜高等学校(秋田県)の陳豪君。同じく吹奏楽部に入ったのは、佐賀県の龍谷高等学校に通う楊鉄寧さん。フルートを担当しているという。

  剣道部に入った立命館宇治高等学校の周冀龍君は、「最初は野球部に入りましたが、しんどかった。剣道部も練習は月曜から土曜まであって大変ですが、日本っぽい部活なのでよかった。一回試合をしましたが、不戦勝でした(笑)。帰国までの目標は初段をとることです」。広島市立舟入高等学校の陳傲さんも剣道部に入部していて、毎日4キロ走っているそう。今後楽しみにしていることを尋ねると、「ホストファミリーのお父さんの趣味は釣りです。3月に連れて行ってもらう約束をしています」と笑顔が返ってきた。

異なる文化に目を開き、心を開く


  研修3日目の最後に、日中交流センターの阿南惟茂所長の講話を聞いた。「10代のうちに悔しく、つらい経験をすることは必ず将来につながります。一人で困難に立ち向かって下さい。留学を通して、自分とは異なる文化に目を開き、心を開き、視野の広い人間に成長してもらいたい」と語った。

   質疑応答の時間に、真っ先に手を挙げたのは姜慧玲さん(鹿児島県・神村学園高等部)。「これからの人生についてアドバイスを下さい」と姜さんが発言すると、阿南所長は「大事な質問ですね。まず周りの人には親切にしなさい。そして自分の考えを持ち、自分のやりたいことに向かって困難があっても前進すること。何をしたいか分からない人もいるでしょう。ならば、考えなさい。やりたいと思えることを探し、それに向けて努力を続けて下さい」と、言葉を贈った。

  「観光客」でいる間は、見るものすべてが新鮮で楽しいものだが、「生活者」になるにつれ、カルチャーショックを感じるようになる。悩むことも戸惑うこともある。心がすくんで前に進めなくなったこともあっただろうが、それはみな同じ。互いに悩みや課題を共有することで、解決策を見つけていく。また、自分では気づかなかった他の人の「発見」や「視点」を知ることも日本への理解につながっていく。

  仲間と過ごした5日間。気持ちも新たに31人は、北へ南へ帰って行った。次に会うのは中国へ帰国する7月。きっと、晴れ晴れとした顔で集えるはずだ。

取材・文:須藤みか 取材日:2016年1月31日、2月1日

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