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卒業生インタビュー

インタビュー 心連心プログラム修了生の「日中交流の担い手」として成長した様子を取材します。

Vol.043 皇甫丹婷 さん

写真を拡大京都駅で。勤務先は大阪高槻だが、慣れ親しんだ京都から通勤している。

名前
皇甫丹婷こうほ  たんてい さん

プロフィール
  1992年生まれ。遼寧省瀋陽市出身。東北育才外国語学校在学中に、「心連心・中国高校生長期招へい事業」第3期生として京都の立命館中学校・高等学校へ留学。2012年、東京大学文科三類入学。今春卒業し、日本たばこ産業株式会社(JT)に入社。

メーカーで人事をやりたい


写真を拡大せっかく日本にいるのに東京だけではもったいない、地方も知ろう――。と、大学時代、伊豆で日中交流イベントを仲間と企画した。

  帰省客と観光客でにぎわう京都駅構内のティールーム。白いカットソーにグレーのパンツ。シンプルでナチュラルなコーディネートが似合う女性が現れた。心連心第3期生の皇甫丹婷さん。今年4月、日本たばこ産業(JT)に入社。大阪府高槻市にある医薬事業部の総務部に配属された。庶務を担当しながら、仕事をひとつひとつ覚える日々だ。

  総務部は、会社の根幹を支える重要なセクション。総務なくして会社は回っていかない。とはいえ、縁の下を支える一見地味なセクションでもある。新卒の学生で自ら志望するという人はそう多くはないだろう。明るく行動的な印象の皇甫さんが、どう感じているのか、まずは聞いてみた。

  「就活を始めた当初から、メーカーで人事をやりたいと思っていましたので、希望通りなんです。日本は女性の管理職率が高くはありませんよね。女性の社会進出に関わることができればと思っています。日本の企業は外国人をもっと採用したいと考えていますが、実際は離職率が高い。国際交流にはずっと興味を持っていて、学生時代も活動してきました。女性も外国人も、いろんな人がいろんな価値を共有して働いていけるような環境をつくっていく仕事をしていきたいと思っています」

  希望がかなっての配属だったわけだが、就活中には困惑する場面もあった。面接で「メーカーで人事をやりたい」と言うと、たじろがられたり敬遠されているように感じることが多かったという。

  「『君、ほんとは商社を受けているでしょ。人事がやりたい?そんなわけない』なんて言われたこともありました」

国際交流、アルバイト経験から得たもの


写真を拡大卒業式

  皇甫さんは東北育才外国語学校在学中に、心連心プログラムを通して立命館中学校・高等学校へ留学。帰国し母校を卒業すると、再び日本へ。京都の日本語学校に在籍しながら受験の準備を進め、東京大学へ入学した。

  東大生で、日本語、英語ともに堪能。明るく社交的な雰囲気を持つ優秀な中国人女性なら、海外営業が強みを活かした適職だ。そう思いこむ人がいるのは自然なことだろう。

  しかし、他にも大きな強みがある。国際交流活動や中国人同士の交流、アルバイトや就活の中で感じた問題意識だ。特に、人事系のベンチャー企業でのアルバイト体験は現在のモチベーションにつながった。

  海外の学生を採用したい企業の側に立って、中国の重点大学へのアプローチや中国人学生の面接活動にも携わった。多様性の推進をうたい、外国人学生を採用するというが、なぜ採用したいのか明確な答えが出ていない企業が少なくないと感じた。とりあえず採用してみて、あとで考えればいいというあいまいな姿勢も見え隠れする。ずっと同じ会社で働きたいと思わない外国人学生に違和感を抱いたり、多様性を標ぼうしながら、日本の働き方や習慣に押し込もうとする。そんな企業にもどかしさを感じてきた。

  「入社早々、外国人が他に一人もいないような地方の工場に3年派遣しても、その意味が分からない外国出身の新入社員はすぐに離職してしまいます。長い目で見て、育てていくという日本の企業姿勢は素晴らしいもので、だからこそ私も日本の会社で働きたいと思ったのですが、そうした姿勢が外国の学生にはまだまだ理解されていません。外国人は、自分自身が経験を積み、成長できるチャンスが与えられない企業には魅力を感じませんが、企業側はそこを理解できていなかったりもします」

取材されるようなキャリアウーマンに


写真を拡大会社のボランティア活動で

  就活ではしっかりと企業研究をした。リクルーター制度の存在を知って、友人に紹介され、いろいろな企業の若手社員との食事会にも出かけた。

  「自分で道を切り開いていきたいので、中国人留学生をたくさん採用している企業ははずしました。人事に力を入れていること、家賃補助など福利厚生の制度が整っていることを重視して就活をしました」

  最終的に「ドメスティック感がなくて、多様性を受容しやすい会社だ」と感じて、JTへの就職を決めた。

  「日本の働き方に違和感を持っているのは外国人だけではありません。日本人、特に若い世代は何か違うと思いながらも私の考えが甘いのかもしれないと、仕方なく受け入れているところもあると思います。外国人が働きやすい会社になることは、日本人にとっても働きやすい会社になることですよね。

  今は、自分の力を蓄える時期。目標は、10年後に『日経ウーマン』に取材されるようなキャリアウーマンになっていたいです。『10年後のイメージは?』と就活で聞かれると、そう答えてきました。<外国人で女性で人事>というのは、もし雑誌に載ったら、インパクトがあるでしょう(笑)」

ホストファミリーから学んだ丁寧な暮らし


写真を拡大自転車でツーリングも楽しむようになった

  皇甫さんはボキャブラリーも表現力も豊かだ。

  高校時代の部活のハードさを見て、「日本のサラリーマンの精神力や組織力は、部活時代に養われるのだと思った」。

  1軒目のホームステイ先のホストファミリーは30代前半の夫婦。年齢がそう離れていないこともあって、お姉さんのように慕った。

  「日常の暮らしを大切にしている人です。高いブランド物のかばんを買ったりはしないけれど、日常的にちょっといいお茶を飲んだり、ちょっといい椅子に座ったり、洗剤は地球にやさしいオーガニックのものを使う。日常の中のプレミアム感を大切しているというか…。中国では、100円の豊かさを得ようと思ったら、1,000円払わないといけないけれど、日本では100円の物にもすごく価値があるものが多いですよね。そういうものもうまく取り入れていました。日本に来るまで、心が豊かになるお金の使い方もやり方も分からなかったけれど、ホストファミリーに教えてもらったと思っています」

  Fecebookでつながっているホストファミリーとは今も年に1回、食事をしているという。

  2軒目のホームステイ先での生活については「ホストファミリーは60代の夫妻でしたが、共働きで忙しくて3人の子どもにできなかったことを私にしようと思ったそうで、愛情をすべて私に注いでくれました。おかげさまで2か月で5キロ太りました」と、笑いながら振り返る。

  彼女が日本語に興味を持ったのは、アニメがきっかけ。特に、「名探偵コナン」が大好きだった。でも、中国で見られるのはDVDだけ。

  「小5のときの夢は、アニメに出てくるような女子高生の制服を着て、日本の映画館で劇場版コナンの映画を見ることでした。だから、高校時代に(京都の)二条の映画館で見ることができた時はとても幸せでした。正直言えば、今は昔ほど好きではないですけど毎年、恒例行事のように見に行っています」

  子どもの頃、そんな夢を見ていたこと、そして夢がかなったことを確認する意味もあるようだ。日本の企業の中でダイバーシティ(多様性の受容)を推進するため、人事の分野で結果を出していくという夢もぜひ実現してほしい。

  皇甫さんは言う。
「だんだん大人になって、お金の流れが分かるようになりました。心連心プログラムでの留学には、日本の人たちのお金が使われています。日本のおかげで今の私がいます。その恩返しをしていきたいと思っています」

  【取材を終えて】
  前日は、兵庫の須磨海岸に友人たちと海水浴に出かけたとか。メンバーは日本人、中国人、スイス人と国際色豊か。「ナンパが多くって。それも日本の文化かなと思いました(笑)」。ウィットに富んだ軽妙な会話は楽しいものでした。「正しい日本語を使って接客したい」とファストファッションの店などでアルバイトしてきた経験も大きいのでしょう。
社会人としての経験を積んだ10年後、どこかの誌面の中に皇甫丹婷さんの笑顔を見つける日を心待ちにしたいと思います。
(取材・文:須藤みか 取材日:2016年8月14日)

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