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卒業生インタビュー

インタビュー 心連心プログラム修了生の「日中交流の担い手」として成長した様子を取材します。

Vol.018 莊 思齊さん

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名前
莊 思齊そう しせい さん

プロフィール
  1993年6月湖北省武漢市江漢区出身。武漢外国語学校高中部2年生のとき「心連心」の第4期生(2009年9月~2010年7月)として東京学芸大学附属高等学校大泉校舎(東京都練馬区)に留学し、2011年9月、北京第二外国語学院日本語学科に進学。2015年より大学院に進学予定だ。

ある「事件」を通して培うことができた自主性


  「私がいちばん強調したいことは、高校時代に留学することがどれだけ得難い経験かということですね」――目を輝かせながら、「心連心」プログラムが持ついちばんの価値を「高校留学」と語る莊さん。日本留学そのものは、大学生になってからも、社会人を経験した後でもチャンスはいろいろあるが、莊さんは、「心連心」でしか体験し得ない経験を実感しているという。

  「一般家庭のホストファミリーで家族の一員になり、クラスでたったひとりの外国人として授業を受ける緊張感と醍醐味は、大学では味わえません。留学生同士で群れたりお客様扱いされることなく、“個”として日本社会に溶け込みながら学べる意義は何ものにも代え難いものだと思います」

写真を拡大初めての振り袖体験。着付けてくれたのはホストファミリーのお母さん。

  莊さんは、1年間で6組のホストファミリーにお世話になったという。

  「着物を着付けてくださった三味線のお師匠さん、中国人ファミリー、日中国際結婚したご夫婦など、多様な家庭で、それぞれ異なる生活に触れることもできました。大学の留学生宿舎ではかなわない体験でしょうね」

  莊さんが、留学を通じて大きく養われたのは「自主性」という。

  「一人っ子として何不自由のない幼少時代を過ごしてきた私は、当然ながら家庭や学校に守られて来たので、何かを思い悩むこともなく周囲に身をゆだねていればよかったですから」

  そんな“お嬢さん”も、日本では何事も一人で判断し、悩み、行動しなければならないことを学んだ。

  「日本は気遣いの国。他者を思いやることの大切さも痛感しましたね。特に日本人は穏やかで理性的なので、中国人のように感情をストレートに表すことが少ない。だから相手の真意が汲み取りにくい面もあります。甘えられる相手がいない環境の中で、どうすれば溶け込んでいくことができるか、複雑な思いを日本語でどう表現すれば伝わるのか、常に立ち止まり、考えていた日々だったように思います」

  「言いにくいのだけど……」と前置きしつつ、莊さんは、あるホストファミリーでお世話になっている時に、自分の不注意からその家庭に大きな経済的損失を与えてしまった事実を告白してくれた。「その出来事のせいで、優しかったホストファミリーのお母さんも激怒し、笑顔で話し掛けてくれることがなくなるという出来事がありました。中国にいれば周囲の大人に解決を託せたかもしれませんが、留学中の身では自分で答えを見つけなければならない」

  価値観や謝罪の概念が異なる外国でひとり思い悩んだ莊さん。心細かったのでは?

  「そうですね。どうすれば私の謝罪の気持ちが伝わり、お母さんに再び笑ってもらうことができるだろう、どうすればファミリーの温かい雰囲気を取り戻せるだろう……あれほど自分で悩み、考え、模索した経験は過去にもありません。時間は掛かりましたが、何通もメールを送ってお母さんに思いを伝え、遠出した折にはお母さんの喜ぶ顔を思い浮かべながら土産を買い求めるなどして、少しずつ信頼を回復させることができました」

  やや特殊な部類に入る経験だが、莊さんは、自分がひと回り成長できた出来事と語る。

ランチタイムで感じた日本人の「仲間意識」


  莊さんは、日本とのゆかりや強い日本への憧れがあったわけではない、ごく普通の少女時代を過ごした。13歳で武漢外国語学校の日本語学科に進学したのも、両親に勧めによるものだったという。

  「武漢市の標準的な家庭で育った私は、家庭内や周囲に日本的なものがあふれていたわけではなく、ふたりの伯母が福岡県に在住という以外は特に日本を意識することもなく育ちました。何が何でも日本! という強い思いがあったわけではないのです。ただ私は誰よりも外国語学習が得意だったので、日本語という外国語の奥深くへ引き込まれていくにつれて、日本文化や日本社会についての関心も高まっていったように思います」

  留学中は前述のとおりホストファミリー6家族にお世話になった莊さん。日本で初めて体験した「電車通学」も忘れ難い思い出だったようだ。

  「あるファミリーは神奈川県川崎市にあり、練馬区の大泉学園まで毎日、片道2時間をかけて通学した時期もあります。中国では自宅から学校まで離れている生徒のために多くの中学や高校は学生宿舎を設けていますし、大学生はキャンパス内の宿舎での集団生活が基本。だから何時間もかけて毎日通うような機会はまずないので、首都圏のラッシュアワーに揉まれるという、しんどかったけれど貴重な体験ができましたね」

  莊さんは、日本での高校生活の中でも昼食がとりわけ印象に残っているという。留学先の東京学芸大学附属高等学校大泉校舎では生徒が皆、弁当を持参し、少人数の仲良し同士がかたまって食べていた。日本の学校ではごく日常のランチ光景だが……。

写真を拡大きぐるみを着て日本の友達とはしゃぐ莊さん。

  「教室内に小さなグループがいくつもあって、グループ同士の交流がない光景は正直、とても奇異に映りましたね。中国の学校は大勢が食堂で和気あいあいとにぎやかに食事をするのが普通なのです。その空間に見知らぬ人や特別親しくない人がいても気にはしません」

  どのグループに入るべきか、誰を誘うべきかなどで莊さんも戸惑ったのではないだろうか。「私は幸い、唯一の外国人ということもあって常に“一緒に食べようよ!”“こっちにおいで!”と誘ってもらえました。でも、積極的に声を掛けられない内向的な学生は、“一人弁当”で孤立感を感じていたようです。この時は、日本社会特有の仲間意識を強く感じました」

  多くの中国人が日本留学で実感したように、莊さんも日本人が持つ粘り強さや根気強さ、チームワークを誇るべき特性と感じているようだ。いっぽうで日本人は、事前にきっちり組んだ計画にこだわるあまり、やや柔軟性に欠ける面も指摘している。

  「中国人は困難に直面するとすぐに諦めがちですし、自分に与えられたミッションさえ遂行すれば満足してしまう自己完結型。逆に、順応性や臨機応変な対応など日本人より優れている面もあります。今も校内活動や“心連心“関連イベントなどを通じて日本人大学生と交流する機会があり、この国民性の違いを実感できるのが面白いですね」

  ヴァイオリニストとして大学のオーケストラに所属する莊さんは、クロアチア人ピアニスト、マクシム・ムルヴィツァの代表曲『クロアチアン・ラプソディ』がお気に入り。イタリア人作曲家ヴィットーリオ・モンティのヴァイオリン独奏曲『チャールダ―シュ』も好んで演奏するという。留学終了前の歓送会で、ホームステイ先のお姉さんとバロック時代の名曲『パッヘルベルのカノン』を合奏したのも忘れられない思い出だ。

メディアに関わりながら日本を見つめ続けたい


  もともと日本への関心は、中国の一般の若者と大差なかった莊さんだが、留学を通じリアルな日本を体験できたおかげで、今や興味対象の大半が日本の社会や政治、と硬派な面をのぞかせる。将来はメディアの一員として日本と中国、ふたつの異なる世界を見つめていきたいとか。

  「大学卒業後も大学院で日本をテーマに研究を続ける予定で、できれば日本に改めて留学して学びたいと考えているのです。そうですね、今は漠然と、香港を拠点にした華人向けのグローバルメディアや日本のメディアで記者として働ければいいなあと思っています。真実に迫ったニュースを伝えるためには、一般市民から多くの本音を引き出せるかどうかが重要。留学やインターンを通じて取材経験を積みたいですね。」明確なメディア志向を持つ莊さんが好んで観るのは、日本の経済ドキュメンタリーと笑う。

  「もちろん、空知英秋のSF時代劇『銀魂』や緑川ゆきの伝奇ストーリー『夏目友人帳』のような漫画やアニメも好きですよ!俳優の小栗旬さんを、素敵だなあと思ったことだってあります。でも、今いちばん関心のある日本人は誰かと問われれば、安倍晋三内閣総理大臣やジャーナリストの池上彰さんを挙げますね」

  かなりのシブ好み!

  「ははは。友達にも呆れられるんです。でも池上さんは、難しい事柄をできるだけ平易な表現で、誰にでもわかるように伝える能力が優れていると実感します。私も彼の話し方や表現、言葉の選び方を勉強しているので、将来、メディアで日本語を使いながら仕事をする際に生かせれば嬉しいですね」

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  ソニーに就職した憧れの「学姐(OG)」舒さんを訪ね、インタビューする莊さん(中央)のまなざしは真剣そのもの。舒さんから「将来どうしたいかを考える前に、まず自分自身の能力や素質をよく分析することが大切」と言われたことが、深く印象に残っているという。

  【取材を終えて】  相手の目をまっすぐ見つめ、笑みをたたえつつ穏やかに語る莊さん。とかく「私が!」「私は!」と前のめりで自己主張しがちな若い女性には珍しく、ゆったり“聞き上手”な点もどこか池上彰さんを思わせた。「高校留学生活はワクワクの連続!」「凝り固まっていた常識や壁をブチ壊して世界を広げる契機にしてほしい!」と話す彼女の体験に刺激され、一人でも多くの後輩に日本という現場で「打開眼界(見聞を広める)」してもらいたい。【取材、文:田中 淳(NNA) 取材日:2013年12月16日】

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